「高校無償化」でも、公立で30万円かかりました──誤解される3つのこと
2026年度から高校の授業料支援は所得制限が撤廃され、公立11.88万円・私立45.7万円が支援されます。でも「無償化」ではありません。我が家は公立ですが、学校指定のタブレットや専用の服で15万円、制服代10万円、通学用の自転車5万円、合わせて入学時に30万円かかりました。文科省の調査でも年間の学習費は公立59.7万円・私立117.9万円で、公立の学校教育費の最大項目は通学関係費。私立は平均で32万円が支援の対象外として残ります。実際にかかったお金と、この言葉が生んでいる誤解について書きました。
「高校って、無償化になったんでしょ?」
最近、そう言われることが増えました。悪気なく言われるのですが、そのたびに少し困ります。
なっていません。正確には、「授業料の一部または全部が支援される」だけです。
我が家には公立高校に通う子どもがいます。制度の対象で、ありがたく支援も受けています。それでも、お金はかかっています。
この記事は制度を批判したいのではありません。支援そのものは本当に助かっています。ただ、「無償化」という言葉の使われ方が、いろんな人に誤解を生んでいて、それが誰の得にもなっていないと感じています。
まず、制度そのものの話
文部科学省によると、2026年度(令和8年度)から高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃されました。関連する法律は2026年3月31日に成立しています。
支援される金額は次のとおりです。
- 公立高校:年 11万8,800円
- 私立高校:年 45万7,000円
返済は不要です。所得制限がなくなったので、これまで「うちは対象外」と思っていた家庭も対象になっている可能性があります。ここは素直に大きな前進だと思います。
ただし、申請しないともらえません
自動では適用されません。原則として入学時の4月に、学校を通じて申請します。
- e-Shien(文科省のオンライン申請システム)
- または紙の申請書+マイナンバーカードの写しを学校に提出
我が家はe-Shienで申請しました。手続きで困ることは、ほとんどありませんでした。 学校から案内が来るので、それに沿って入力するだけです。ここは身構えなくて大丈夫だと思います。
勘違いしやすい2つのこと
①お金は振り込まれません
支援金は保護者の口座に入るのではなく、学校が代わりに受け取って授業料に充てられます(代理受領)。「いつ振り込まれるの?」と待っていても入ってきません。授業料の請求が減る、という形です。
②入学時だけでは終わりません
受給している間は、毎年、収入状況の届出が必要です。入学時に一度出したら卒業まで自動、ではありません。
ここからが本題:「無償化」が隠しているもの
さて、ここからが書きたかったことです。
文部科学省の「令和5年度 子供の学習費調査」によると、高校生1人にかかる1年間の学習費総額はこうなっています。
- 公立(全日制):約59万7,000円
- 私立(全日制):約117万9,000円
授業料が支援されても、公立で年約60万円かかっているのが実態です。
内訳を見ると、公立の学校教育費(約35万2,000円)でいちばん大きいのは通学関係費(約9万8,000円・27.8%)、次いで図書・学用品・実習材料費等(約6万2,000円・17.7%)です。上位2つがどちらも「授業料以外」なのが、この問題をよく表しています。
我が家の場合:公立で、入学時に30万円
うちの子は専門学科に進みました。そこで必要になったのが、学校指定のタブレットや、専用の服などです。
これで、約15万円。
そして、これとは別に制服代が約10万円。
さらに、通学に使う自転車で約5万円。
合わせて、約30万円です。
公立高校です。授業料は支援されています。それでも、入学のタイミングでこれだけかかりました。
学科の性質上どれも必要なものなので、そこに不満はありません。ただこれらはすべて就学支援金の対象外です。工業系でいえば工具、といったイメージのものを想像してもらうと近いと思います。
「授業料が無償なら、あとはかからないよね」という前提は、我が家では成り立ちませんでした。
話題にすらならないのに、実は最大の項目「通学費」
いま自転車代を挙げましたが、通学のお金は「無償化」の話でまず出てきません。
自転車通学なら自転車代。電車通学なら定期代が毎月かかり続けます。住んでいる場所と学校の距離で決まるので、同じ学校でも家庭によって金額がまったく違う。 だから話題になりにくいのだと思います。
でも、これは気のせいではありませんでした。文部科学省の調査を見ると、公立高校の学校教育費でいちばん大きい項目が「通学関係費」(約9万8,000円・27.8%)なんです。授業料でも教材費でもなく、通学費が1位。
統計にはハッキリ表れているのに、「無償化」の議論では一度も出てこない。 ここが、この問題の分かりにくさを象徴していると思います。
私立は、公式データがもっとはっきり語っています
私立を選んだ家庭を責めるつもりは一切ありません。ただ、入る前に総額を知っておくことは大事だと思うので、数字を置いておきます。
文部科学省の「令和6年度 私立高等学校等初年度授業料等の調査結果」によると、私立高校(全日制)の平均はこうです。
| 項目 | 平均額 |
|---|---|
| 授業料(年額) | 457,331円 |
| 入学金 | 165,898円 |
| 施設整備費等 | 157,232円 |
| 初年度納付金の合計 | 780,460円 |
ここで注目してほしいのが、支援額45万7,000円という数字です。
平均授業料が457,331円で、支援が457,000円。ほぼぴったり同じです。つまり支援額は「全国平均の授業料」に合わせて設計されています。
ということは──授業料はほぼ消えても、入学金と施設整備費は残ります。
> 780,460円 −457,000円 = 約32万3,000円
平均的な私立高校でも、初年度に30万円以上は必ず残る計算です。しかもこれは平均なので、授業料が45万7,000円を超える学校なら、その超過分も自己負担になります。そこに制服代、教材費、修学旅行の積立、部活動費が乗ります。
「無償化だから」と身構えを解いた状態でこの請求書を見たら、驚くのは当然だと思います。
誰も得していない、3つの誤解
私が問題だと感じているのは、制度の中身ではなく、伝わり方です。「無償化」という強い言葉だけが広まった結果、三方向で誤解が起きています。
① 世間から「タダなんでしょ」と思われる
当事者でない人ほど、「高校はもうお金かからない」と思っています。実際には公立で年60万円かかっているのに、その前提で話が進んでしまいます。
② 上の世代から「今の子育て世帯は恵まれている」と見られる
支援があるのは事実です。でも「補助をもらって楽をしている」という受け取られ方をすると、実際の負担が見えなくなります。世代間で無用な溝ができるのは、誰の得にもなりません。
③ これから高校生になる家庭が、教育費を貯めなくなる
これがいちばん怖いと思っています。「無償化だから貯めなくていい」と判断して準備を止めた家庭が、入学時に数十万円の請求を受ける。制度に助けられるはずの人が、言葉のせいで準備を失うという、いちばん避けたい形です。
支援は本当にありがたい制度です。だからこそ、「授業料の支援」と正確に呼んでほしいというのが、当事者としての実感です。
じゃあ、どうすればいいのか
批判だけで終わっても意味がないので、実際にできることを書きます。
入学前に「授業料以外」を総額で出す
学校を選ぶ段階で、授業料ではなく総額を見てください。確認したいのはこのあたりです。
- 入学金・施設整備費(初年度のみのものが多い)
- 制服・体操服・指定用品
- 学科特有の費用(実習服、道具、資格の受験料など)
- 教材費・タブレット等の端末代
- 修学旅行の積立(3年間で数十万になることも)
- 通学定期代(公立でもここが最大の費用でした)
- 部活動費
多くは学校の募集要項や説明会資料に書いてあります。 「授業料」の欄だけ見て安心しないことが、いちばんの防御です。
ChatGPTの使い方(ここは注意点つき)
学校からもらった資料は、正直読みにくいです。私は手元の資料を整理させる使い方をしています。
> このプリントに載っている費用を、「入学時に一度だけかかるもの」と「毎年かかるもの」に分けて表にしてください。
こうすると、3年間の総額が見えます。
ただし、制度の金額や条件そのものをAIに聞くのは避けてください。 AIは古い情報を答えることがあります。数字は必ず、学校の資料と公式ページで確認してください。
支援で浮いたぶんは、行き先を決めておく
授業料が軽くなったぶんを生活費に溶かしてしまうと、タブレット代や修学旅行の積立が来たときに効いてきます。我が家の30万円も、入学のタイミングでまとめてやってきました。
金額が決まっているお金は、先に行き先を決めておくのがいちばん確実です。考え方は先取り貯金の記事にも書いています。
まとめ
- 2026年度から所得制限が撤廃。公立11万8,800円・私立45万7,000円が支援されます。これは大きな前進
- ただし申請が必要。e-Shienまたは紙で、入学時の4月に学校へ
- お金は振り込まれません(学校が受け取り授業料に充当)。毎年の届出も必要
- でも「無償化」ではありません。我が家は公立で、入学時に約30万円(タブレット・専用の服15万円+制服10万円+自転車5万円)
- 文科省の調査でも年間の学習費は公立 約59万7,000円・私立 約117万9,000円
- 公立の学校教育費の最大項目は「通学関係費」。定期代や自転車代は、無償化の議論では話題にすらなりません
- 私立は平均で初年度に約32万3,000円が支援の対象外として残ります
- 学校を選ぶときは、授業料ではなく総額で見てください
支援制度そのものには感謝しています。ただ「無償化」という言葉が独り歩きして、これから高校生を持つ家庭が準備をやめてしまうことが、いちばんもったいないと思っています。
※本記事は2026年7月時点の公表内容をもとにしています。制度や手続きは変更されることがあり、締め切り・必要書類は学校や自治体によって異なります。必ず学校からの案内と公式ページでご確認ください。
参考(すべて文部科学省) - 高等学校等就学支援金制度 - 令和5年度 子供の学習費調査 - 令和6年度 私立高等学校等初年度授業料等の調査結果