床下断熱の効果は、電気代の合計を見ても分かりませんでした
自宅の床下断熱から1年たったので、電力会社の使用量データで確かめました。冬4か月を前年と比べても、電気代はほとんど変わっていません。ところが冷暖房を使わない秋を同じように比べたら、家全体が1日2.24kWh増えていました。生活が変わって在宅時間が伸びていたのです。この分を引くと、冬は1日3.12kWh減っていました。合計だけ見ていたら「効果なし」と書くところでした。数字の追い方と、それでも分からなかったことを書きます。
我が家の条件
先に書いておきます。この数字は我が家の条件でのものです。
| 場所 | 兵庫県(瀬戸内の気候) |
| 建物 | 2010年築・木造2階建て・建売 |
| 広さ | 延床88㎡(約26.5坪) |
| 家族 | 4人 |
| 熱源 | オール電化 |
| 料金プラン | 時間帯で単価が変わるプラン |
| 工事 | 2025年8月に床下断熱 |
| データ | 電力会社の1時間ごとの使用量。前の冬と今の冬、それぞれ121日ぶん |
工事の中身
「床下断熱」といっても、断熱材を増やしたわけではありません。
- 落ちかけていた床下の断熱材を、もう一度きちんと密着させ直す
- 根太まわりのすき間を発泡ウレタンでふさぐ(気密)
- ユニットバスの下を、外気から切り離す
つまりすでにある断熱材を、ちゃんと仕事をする状態に戻した工事です。
🔴 大事な前提:この数字は「家全体」のものです
これから出す数字は、すべて家全体の使用量です。
電力会社の検針データは、家に入ってくる電気の合計しか分かりません。暖房が何kWh使ったかは、切り出せません。
だから「断熱で暖房が○○kWh減った」とは書けません。書けるのは「家全体の使用量がこう変わった」までです。ここは最後まで守ります。
時間帯の呼び方
我が家のプランは、時間帯で単価が変わります。
| 呼び方 | 時間 |
|---|---|
| ナイトタイム | 23時〜7時 |
| リビングタイム | 7時〜10時、17時〜23時 |
| デイタイム | 10時〜17時 |
以下、この呼び方で書きます。
まず、そのまま比べてみました
冬(12月〜3月)の121日を、前の冬とそのまま比べます。
気温がちがうと比べられないので、その日の最低気温をそろえました。
| 最低気温 | 日数<br>(前/後) | 断熱前<br>2024-25年の冬 | 断熱後<br>2025-26年の冬 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| −5〜2℃ | 40日 / 40日 | 27.22 kWh/日 | 27.10 kWh/日 | −0.12 |
| 2〜5℃ | 42日 / 37日 | 24.57 kWh/日 | 22.75 kWh/日 | −1.82 |
| 5〜8℃ | 29日 / 27日 | 19.67 kWh/日 | 19.03 kWh/日 | −0.65 |
いちばん寒い日(−5〜2℃)で、たった0.12kWh。
電気代にすると、冬4か月で1,400円ほどです。工事をした身としては、正直がっかりしました。
ここで記事を書いていたら、「床下断熱は電気代にほぼ効かない」と書いていたはずです。
冷暖房を使わない季節を見て、話が変わりました
引っかかったことがあります。
いちばん寒い日だけ、ほとんど減っていない。 断熱が効くなら、寒い日ほど差が出るはずです。逆になっている。
そこで、冷暖房をほとんど使わない秋(9月〜11月)を同じやり方で比べました。ここに差が出たら、それは断熱とは関係のない何かです。
| 最低気温 | 日数<br>(前/後) | 2024年の秋 | 2025年の秋 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 10〜15℃ | 12日 / 14日 | 13.63 kWh/日 | 16.14 kWh/日 | +2.51 |
| 15〜20℃ | 21日 / 15日 | 12.43 kWh/日 | 14.57 kWh/日 | +2.14 |
| 20〜25℃ | 21日 / 25日 | 12.99 kWh/日 | 15.05 kWh/日 | +2.06 |
暖房も冷房も使っていない季節に、家全体が1日2kWh以上増えていました。
平均すると +2.24kWh/日。断熱とはまったく関係のない増加です。
増えたのは「朝晩と夜」だけでした
この2.24kWhがどこで増えたのか、時間帯で分けます。
| 時間帯 | 増えた量 |
|---|---|
| デイタイム(10〜17時) | +0.01 kWh(変化なし) |
| リビングタイム(7〜10時・17〜23時) | +1.48 kWh |
| ナイトタイム(23〜7時) | +0.75 kWh |
日中はまったく変わらず、朝晩と夜だけが増えています。
心当たりがありました。2025年の夏から、家族の生活が変わって、家にいる時間が伸びていました。 昼間の留守は変わらないまま、朝と夜が長くなった。数字の形とぴったり合います。
つまり、こういうことです。
断熱で減った分と、生活が変わって増えた分が、 たまたま打ち消し合っていた
合計だけ見ていたら、一生気づけませんでした。
引き算すると、こうなりました
秋で分かった「生活ぶん」を、冬の数字から引きます。
| 最低気温 | 見かけの差 | 生活ぶんを引いた差 |
|---|---|---|
| −5〜2℃ | −0.12 | −2.36 kWh/日 |
| 2〜5℃ | −1.82 | −4.05 kWh/日 |
| 5〜8℃ | −0.65 | −2.88 kWh/日 |
日数で重みをつけて平均すると、1日 −3.12kWh。
見かけの数字(冬4か月で1,400円)と、6倍ちがいます。
減ったのは、やっぱり夜でした
時間帯で分けると、こうです。
| 時間帯 | 生活ぶんを引いた減り方 |
|---|---|
| ナイトタイム(23〜7時) | −1.3 〜 −2.6 kWh/日 |
| リビングタイム | −0.6 〜 −1.5 kWh/日 |
| デイタイム | ほぼ変化なし |
いちばん減ったのは、夜中から明け方でした。
ここで「寝ている間は誰も何もしないから、家の性能がそのまま出ている」と書きかけました。でも、それは間違いです。
🔴 深夜に動いているのは、暖房ではありませんでした
我が家はオール電化で、エコキュートでお湯を沸かしています。沸かすのは深夜です。
1時間ごとの使用量を出したら、はっきり見えました。
| 時間 | 断熱前 | 断熱後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 0〜1時 | 1.41 | 0.65 | −0.76 |
| 1〜2時 | 1.29 | 0.66 | −0.63 |
| 2〜3時 | 1.52 | 2.02 | +0.50 |
| 3〜4時 | 2.09 | 1.90 | −0.18 |
| 4〜5時 | 1.98 | 1.75 | −0.23 |
| (昼 10〜16時) | 0.4〜0.6 | 0.4〜0.6 | ほぼ0 |
※最低気温2〜5℃の日の平均(kWh/時)
深夜は、昼の3〜4倍使っています。 これは暖房ではなく、お湯を沸かしている電気です。
そして、沸かす時刻がずれています。 0〜2時に沸かしていたのが、2〜3時に動いている。
つまり、夜が減った理由はふたつ考えられます。
1. ユニットバスの下を外気から切り離したので、お湯が冷めにくくなった(=断熱の効果) 2. エコキュートが沸かす時刻や量が、単に変わった(=断熱と関係ない)
私には、どちらか切り分けられませんでした。
家に入ってくる電気の合計しか分からない以上、ここが限界です。「夜が減った=断熱が効いた」とは書けません。
電気代にすると
1日3.12kWh減ると、いくらになるか。プランで変わります。
| 料金プラン | 1日 | 冬4か月(121日) |
|---|---|---|
| オール電化の時間帯別プラン(我が家) | 67.5円 | 約 8,200円 |
| 時間帯で単価が変わらないプラン | 102.2円 | 約 12,400円 |
※どちらも再生可能エネルギー賦課金(4.18円/kWh)を含めています。
我が家のほうが、得していません。
減ったのが主に夜中で、そこは単価がいちばん安い時間帯だからです。同じだけ電気を減らしても、安い時間で減らすと金額は小さくなります。
それでも、元は取れません
はっきり書いておきます。
冬に8,200円。夏を足しても、工事費を電気代で回収できる金額ではありません。
というより、元を取るつもりで工事していません。
我が家がやったのは、床下の断熱材を密着させ直して、すき間をふさぐ工事です。目的は最初から「冬に足元が寒いのを何とかしたい」でした。
実際、暮らして変わったのはこういうところです。
- 冬にお風呂のお湯が冷めにくくなった(ユニットバスの下を外気から切り離したので)
- コンセントから冷たい風が出てこなくなった(床下の空気が入ってきていた)
- 夏、リビングのエアコン1台で1階全体がうっすら涼しい(以前はリビングだけ冷えていた)
これは数字ではありません。住んでいる人の感想です。そこは分けて書いておきます。
数字のほうは、冬の使用量が確かに減っていたところまでです。そのうちどれだけが断熱のおかげかは、最後まで分かりませんでした。
それでも私は、この工事をやってよかったと思っています。元を取る話ではなかったからです。
自分の家で確かめる方法
ここがこの記事でいちばん持ち帰ってほしいところです。電気代の請求書では、絶対に分かりません。
やることは3つだけです。
① 金額ではなく、kWh(使用量)で見る
電気の単価は毎年変わります。燃料費調整も補助金も動きます。金額で比べると、自分が減らしたのか単価が下がっただけなのか、区別がつきません。
電力会社のサイトから、日ごとの使用量をダウンロードしてください。多くの会社でCSVが落とせます。
② その日の気温をそろえて比べる
冬の電気は、寒さでほぼ決まります。暖かい冬と寒い冬をそのまま比べても意味がありません。
やり方はこうです。
1. 気象庁のサイト(「過去の気象データ・ダウンロード」)で、自分の地域の日ごとの最低気温をCSVで落とす 2. 電力会社から落とした使用量と、Excelなどで日付を突き合わせる 3. 「最低気温が2〜5℃だった日」だけを集めて、去年と今年の平均を出す
これだけで、かなり公平になります。
③ 冷暖房を使わない季節を、必ず見る
これが今回の肝でした。
春か秋の、暖房も冷房も使わない時期を、同じやり方で比べてください。ここに差が出たら、それは断熱とは関係のない「生活の変化」です。
その分を、冬の数字から引く。それで初めて、家の性能の話になります。
冬の差 − 春秋の差 = 断熱の効果
引き算ひとつです。でもこれをやらないと、私のように真逆の結論を書きます。
正直に書いておくこと
① 家全体の数字です
何度でも書きますが、暖房だけを取り出したものではありません。
② ひとつ仮定を置いています
「生活が変わって増えた分は、秋も冬も同じ」という仮定です。
この仮定は、たぶん厳しめに出ています。 家にいる時間が伸びれば、秋は照明やテレビが増えるだけですが、冬はそこに暖房の分も乗ります。つまり冬の「生活ぶん」は2.24kWhより大きいはずで、そのぶん断熱の効果は3.12kWhより大きいことになります。
ただし逆もありえます。ここは断定できません。
③ 我が家の条件での数字です
2010年築・木造・88㎡・瀬戸内の気候。断熱材を増やしたのではなく、もともとあった断熱材をきちんと効かせ直した工事です。もっと寒い地域や、断熱材がそもそも入っていない家では、まったく違う数字になります。
④ 1年ぶんです
冬は1回しか比べていません。年が変われば動きます。来年も同じように取ります。
まとめ
- 冬の電気代をそのまま比べたら、ほとんど変わっていなかった
- でも冷暖房を使わない秋を見たら、家全体が 1日2.24kWh増えていた(生活が変わって在宅時間が伸びた)
- その分を引くと、冬は 1日3.12kWh減っていた(見かけの6倍)
- 電気代にすると 冬4か月で約8,200円。プランによっては約12,400円
- ただし、いちばん減った深夜はエコキュートが動く時間。断熱のおかげか、沸かし方が変わっただけかは切り分けられなかった
- 工事費は取り返せません。 それでも、お風呂が冷めにくくなり、コンセントから冷気が出なくなった
- 自分の家で確かめるなら ①kWhで見る ②気温をそろえる ③春秋の差を引く
合計の数字は、いろんなものが混ざっています。 混ざったまま見ると、効いているものを「効いていない」と判断してしまいます。
我が家は、あやうくそうするところでした。
この記事を書いた理由
床下断熱をやるかどうか迷っていたとき、明石で同じ工事をした方が、実際の数字を出してくれていました。それが、とても参考になりました。
今回この記事を書くにあたって、もう一度その記事を探しました。もう見つかりませんでした。 出てくるのは、工事会社のページばかりです。
断熱や気密に興味がある人は、正直あまり多くないと思います。そこにお金を出す人は、もっと少ないはずです。
個人が自分の家で測った数字は、こうして静かに消えていきます。
それでも、あのとき私が探していたように、いま同じことを調べている人が、どこかにいると思います。
我が家の数字も、その誰かの役に立てばうれしいです。
同じやり方で、夏も測りました
同じ家・同じデータで、夏にエアコンを24時間つけっぱなしにしたらどうなるかも調べています。冬は夜が減りましたが、夏は夜に増えました。 使っている手順は同じです。
この記事の数字について
- 出典:電力会社の使用量データ(1時間ごと)。冬は各121日、秋は各91日
- 気温:同データに含まれる日別の最高・最低気温
- 単価:時間帯別プランの現行単価(デイ26.24円/リビング22.80円/ナイト15.37円、電化割引5%)、時間帯で変わらないプランは300kWh超の28.59円、賦課金は2026年度の4.18円/kWh
- 1日あたりの数値は、気温帯ごとの日数で重みをつけた平均です